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探偵業の歴史|探偵業法の成立と成立祝賀会の記録(2006年)

探偵業の歴史|探偵業法の成立と成立祝賀会の記録(2006年)

探偵業法成立成立祝賀会参加

目次

成立の背景と「成立祝賀会」の記録(2006年)

<探偵業の歴史シリーズ> 江戸期の岡っ引から、明治の興信所・私立探偵の誕生、そして平成の探偵業法成立まで。日本の探偵・調査業がたどってきた道のりを、当時の一次記録とともにまとめていきます。本稿はそのうち、業界が初めて「法律」を持った瞬間――平成18年(2006年)の探偵業法成立とその祝賀会の記録です。

はじめに

平成19年(2007年)6月1日、日本の調査業界にとって長年の悲願であった一つの法律が施行されました。「探偵業の業務の適正化に関する法律」―通称・探偵業法です。

明治のはじめに私立探偵や興信所が産声を上げてから、実におよそ110年。それまで日本には、探偵・調査業を直接規制する法律が一つも存在しませんでした。本稿では、なぜこの法律が必要とされたのか、どのような人々の手で立法されたのかを外部資料も交えて振り返るとともに、弊社(帝国法務調査室)代表者が実際に出席した成立祝賀会の当時の記録を、一次資料としてそのまま残します。


1. 探偵・調査業の源流 ― 法律ができるまでの110年

探偵業法が「業界初の法律」と呼ばれる理由を理解するには、まずこの業界が法律のないまま1世紀以上を歩んできた歴史を知る必要があります。

江戸時代の「岡っ引」

近代探偵の遠い源流として挙げられるのが、江戸時代の岡っ引です。岡っ引は奉行所などの非公認の協力者として、町奉行所や火付盗賊改方の探索を陰で支えました。身分を明かさずに聞き込みを行うその手法は、後の私立探偵に通じるものがあるとも言われています。

興信所の誕生(明治中期)―「信用調査」のはじまり

明治維新後、株式会社制度や証券取引が広がるにつれ、取引相手の信用を確かめる信用調査が産業発展に欠かせないものとなっていきました。その先駆けが、明治24年(1891年)に大阪で生まれた商業興信所です。続いて明治29年(1896年)には渋沢栄一らによって東京興信所が、明治30年(1897年)には後藤武夫により帝国興信所(現在の帝国データバンク)が設立されました。

私立探偵の登場(明治28年)―岩井三郎事務所

一方、個人や事件を対象とする私立探偵の草分けが、明治28年(1895年)に東京・日本橋で開業した岩井三郎事務所(現・株式会社ミリオン資料サービス)です。創業者の岩井三郎は元警視庁の警察官で、「欧米のように、権力に縛られず自由に事件を追いたい」との思いから退官し、探偵の道に入ったと伝えられます。

岩井三郎事務所は、大正期の海軍汚職スキャンダルシーメンス事件(1914年)の解明に寄与したほか、花王歯磨密造事件、古河炭鉱詐欺事件など、新聞を賑わせた大事件にも関わりました。また、推理作家・江戸川乱歩が弟子入りを志願した逸話や、名探偵・明智小五郎のモデルが岩井三郎だという説も知られています。昭和5年(1930年)には日本初の女性探偵・天野光子も同事務所から育っています。

戦中・戦後

第二次世界大戦下の昭和19年(1944年)、商業興信所と東京興信所が合併して東亜興信所となりましたが、戦争の激化により興信所業務はいったん全面停止に追い込まれます。戦後の復興とともに調査業は再び立ち上がり、高度経済成長と社会の変化のなかで、企業向けの興信所と個人向けの探偵社が並び立つ現在の形へと発展していきました。


2. なぜ法律が必要だったのか ― 無規制時代の課題

長く法律のない状態が続いた調査業界では、平成に入って深刻な課題が表面化します。

警察庁の調査によると、全国の探偵・興信所・調査業者の数は、平成6年(1994年)の2,348業者から、平成15年(2003年)末には5,110業者へと、わずか10年足らずで倍増していました。この急増の背景には、当時の社会情勢――離婚の増加(浮気・素行調査の需要)家出の増加(家出人調査の需要)、そして訴訟・紛争社会化があったと考えられています。

業者の増加に伴い、トラブルも急増しました。国民生活センターに寄せられた探偵・興信所に関する苦情相談は、平成12年度の844件から平成15年度には1,357件へと、約2倍に膨らみます。さらに警察庁がまとめた検挙事例には、盗聴や恐喝といった、調査対象者の秘密を悪用する悪質なケースも含まれていました。

依頼者と業者の契約トラブル、そして一部業者による違法・悪質な営業――。これらを正し、依頼者と調査対象者双方の権利利益を守るために、ついに立法化の検討が始まります。


3. 議員立法による探偵業法の成立

探偵業法は、行政が主導したのではなく、国会議員自身が法案を起草する議員立法として実現しました。

立法の中心となったのは、衆議院議員・葉梨康弘氏が主導する「政務調査会内閣部会・組織本部生活安全関係団体委員会合同・調査業に関するワーキングチーム」です。あわせて、当時の社団法人日本調査業協会をはじめとする業界団体が、業界の健全化と社会的認知の向上を願って立法を後押しし、現場の実情を伝えるなど大きく寄与しました。

法案は次のような経過をたどって成立します。

  • 平成18年(2006年)5月25日 衆議院で可決
  • 平成18年(2006年)6月2日 参議院で可決し成立
  • 平成18年(2006年)6月8日 公布(法律第60号)
  • 平成19年(2007年)6月1日 施行

いずれも小泉内閣の下での出来事でした。こうして、明治以来初めて、探偵業を直接対象とする法律が日本に誕生したのです。


4. 【当時の記録】「探偵業の業務の適正化に関する法律」成立祝賀会

ここからは、弊社(帝国法務調査室)代表者が実際に出席した、成立祝賀会の当時の記録です。法律が生まれた瞬間の空気を伝える一次資料として、当時のまま掲載します。

▼ 成立祝賀会の概要

2006年(平成18年)9月5日/東京・ホテルオークラ

探偵業法の成立を受け、その成立祝賀会が東京都のホテルオークラで開催されました。法律の成立にご尽力いただいた国会議員をはじめ、当協会会長以下、各ブロックの理事長以下など、関係各方面より総勢200名以上が参列し、盛大に催されました。九州・福岡より、弊社代表者も業界の一員として出席いたしました。

私どもといたしましては、ご依頼者にお喜びいただけるよう日々調査技術の練磨に努めるとともに、施行される「探偵業の業務の適正化に関する法律」を遵守し、決意を新たに、真面目に探偵業務へ取り組む所存です。

▼ 出席した国会議員・官公庁職員の面々(当時の肩書)

  • 山本 拓 先生(ワーキングチーム/衆議院議員)
  • 葉梨 康弘 先生(ワーキングチーム/衆議院議員)
  • 平沢 勝栄 先生(ワーキングチーム/衆議院議員)
  • 西村 康稔 先生(衆議院議員 内閣委員会/自民)
  • 泉 健太 先生(衆議院議員 内閣委員会/民主)
  • 大島 敦 先生(衆議院議員 内閣委員会/民主)
  • 田端 正広 先生(衆議院議員 内閣委員会/公明)
  • 小野 次郎 先生(衆議院議員 内閣委員会/自民)
  • 木原 誠二 先生(衆議院議員 内閣委員会/自民)
  • 村田 吉隆 先生(衆議院議員 内閣委員会/自民)
  • 糸川 正晃 先生(衆議院議員 内閣委員会/国民)
  • 秋元 司 先生(参議院議員 内閣委員会/自民)
  • 風間 昶 先生(参議院議員 内閣委員会/公明)
  • 木俣 佳丈 先生(参議院議員 内閣委員会/無)
  • 木村 太郎 先生(防衛庁副長官)
  • 佐野 裕子 先生(警察庁生活安全局生活安全企画課)
  • 佐藤 剛男 先生(衆議院 内閣委員長)
  • 松井 孝治 先生(参議院議員)
  • 竹山 裕 先生(参議院議員)

5. 探偵業法とは ― 何が定められたのか

成立した探偵業法は、条文数こそ多くないものの、業界のあり方を大きく変えました。要点は次のとおりです。

  • 目的……探偵業に必要な規制を定め、業務運営の適正を図り、個人の権利利益の保護に資すること。
  • 探偵業務の定義……他人の依頼を受け、特定人の所在や行動に関する情報を、面接による聞き込み・尾行・張り込みなど実地の調査によって収集し、その結果を依頼者に報告する業務(報道機関の依頼による取材目的のものなどは除外)。
  • 届出制……探偵業を営むには、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会へ(所轄警察署を経由して)届け出ることが必要。
  • 依頼者保護……契約前の重要事項説明、契約内容を明らかにする書面の交付、調査結果を違法行為に用いない旨の確認書の受領などを義務化。
  • 業務上の規制……守秘義務、名義貸しの禁止、従業者への教育義務など。

重要なのは、探偵業法によって探偵に特別な権限が与えられたわけではないという点です。捜査権や逮捕権(現行犯を除く)は一切なく、探偵の調査は、あくまで一般人が持ち得る範囲で行われます。法律はあくまで「適正化」のための枠組みであり、違法行為を正当化するものではありません。


6. 法制定後の歩み(平成 → 令和)

探偵業法は施行後も、社会の変化に合わせて見直されてきました。

  • 令和元年(2019年)12月14日……欠格事由が一部改正。心身の故障に関する規定の整備などが行われました。
  • 令和6年(2024年)4月1日……従来の「探偵業届出証明書」が廃止され、探偵業者は所定の様式の標識を作成して営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載することが義務付けられました(常時使用する従業者が5人以下などの場合は掲載免除)。

法律の制定によって、業界団体の役割も一層高まり、依頼者がより安心して調査を依頼できる環境が整っていきました。


まとめ ― 「歴史」の一ページとして

明治の岩井三郎事務所から始まった日本の探偵・調査業は、110年以上にわたって法律なき世界を歩み、平成18年(2006年)、ついに自らを律する法律を手にしました。2006年9月5日の成立祝賀会は、その節目を業界が共に祝った、まさに歴史的な一日でした。

弊社・帝国法務調査室は、この日に立ち会った一員として、探偵業法の理念――業務の適正化と個人の権利利益の保護――を胸に、これからも誠実な調査に努めてまいります。

<次に読む> ・探偵業の源流:江戸の岡っ引から明治の私立探偵へ ・興信所の誕生と信用調査の歴史 ・探偵業法の条文をやさしく解説 ※シリーズ各篇は、まとめページ「探偵業の歴史」よりご覧いただけます。


【出典・参考】探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号)/警察庁・各都道府県警察 公表資料/業界団体・調査各社の公表する沿革資料 等。本稿のうち「成立祝賀会」の記述および出席者一覧は、当社が当時記録した一次資料に基づきます。

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