探偵-福岡本社HP
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「交際していた頃、妻は『これで最後にしたい、幸せになりたい』って、何度も言ってたんです。」
報告の席で、そう漏らされたご相談者様の言葉が、時折思い出されます。
40代後半の、誠実な男性でした。今回は、私たち帝国法務調査室が福岡で担当した、ある夫婦の不貞調査についてお話しします。プライバシーに配慮して細部は変えていますが、現場で何が起き、その先にどんな現実が待っているのか──同じ立場で苦しまれている方の、ひとつの道しるべになればと思います。
執筆:藤原(帝国法務調査室・上席調査員)
ご相談者様も奥様も、再婚でした。ご主人には前の結婚でお子さんがいましたが、引き取ってはおられません。奥様のほうは、2度の離婚を経て、お子さんを2人連れての3度目の結婚。お互い、過去にいろいろあったうえで「今度こそ」と築いた家庭です。やがてお二人の間にも新しい命を授かり、傍目には順風満帆に見えていました。
転機は、末のお子さんが小学校に上がり、子育てが一段落したタイミング。奥様が「働きたい」と言い出したことでした。ご相談者様は、その再出発を心から応援されたそうです。
ところが、しばらくして違和感が芽生えます。やけに増えた飲み会。仕事先での会食、残業。「働き始めれば付き合いも増えるもの」と自分に言い聞かせていたものの、どうにも腑に落ちない。ある夜、そっと開いた奥様のスマホには、明らかに同僚以上の関係をうかがわせるやり取りが残っていました。相手は同業の男性。そして、その男性もまた既婚者でした。
ご相談者様は意を決して、当事務所の扉を叩かれました。
不貞調査は、行動確認(尾行・張り込み)が基本です。私たちは奥様の生活パターンを丁寧に追いました。
すると、答えはすぐに見えてきます。不倫相手は、福岡の男性ではありませんでした。関東在住、大手広告代理店に勤める正社員。出会いは、マッチングアプリ。「九州なら気づかれない」とでも思ったのでしょうか。さかのぼって関係を分析すると、付き合いはすでに1年半に及んでいました。
男性は、東京から飛行機でやってきます。奥様は、その来訪に合わせていそいそと空港へお迎えに。合流した初日、奥様は「飲み会」と称して夜遅くまで外出し、そのまま男性の宿泊先ホテルに入っていきました。翌日は夕方、男性を車で迎えに行き、福岡市内から糸島方面へドライブ。海沿いのレストランで食事を済ませると、また同じホテルへ。男性が滞在していた3日間、奥様は連日、密会を重ねていたのです。


ホテルへ二人で入り、一定時間を経て出てくる──これは不貞の事実を示す、非常に有力な状況証拠になります。後ほど触れますが、ここを「写真・映像でどう押さえるか」が、調査の肝です。
男性の素性を調べて、私たちは言葉を失いました。
彼は東京都新宿区内のマンションで、妻と子供2人、家族4人で暮らしていたのです。そして出張先である福岡、札幌、大阪、岡山──各地に、不定期に会う女性が複数いることがわかりました。既婚・独身を問わず、です。ご相談者様の奥様は、その「複数の一人」にすぎませんでした。
同じ立場に立たれた方なら、きっとこの問いに苦しまれるはずです。なぜ、あれほど幸せを願っていた人が。なぜ、築いたものすべてを失いかねない選択を。
正直に申し上げます。心の中までは、私たち探偵にも覗けません。ただ、長年この仕事で多くのご夫婦を見てきた経験から、「考えられる背景」をいくつかお話しすることはできます。あくまで一般論として、ひとつの見方として、お聞きください。
ひとつは、「結婚そのものへの不満ではない」ことが多い、という事実です。
意外に思われるかもしれませんが、不貞に至る方の多くは、家庭やパートナーに明確な不満を抱えているわけではありません。今回のケースでも、ご相談者様は誠実で、家庭をないがしろにしていたわけでもない。それでも起きてしまう。つまり「自分のどこが悪かったのか」と責めても、答えが見つからないことのほうが多いのです。
ふたつめは、「役割」に埋もれた自分を、取り戻そうとする心理です。
子育てが一段落し、奥様は「働きたい」と言い出しました。これは前向きな再出発であると同時に、長く「母」「妻」という役割の中にいた人が、ひとりの女性としての自分を意識し直す瞬間でもあります。仕事を通じて新しい世界に触れ、誰かから一人の女性として扱われる──その感覚に、本人も思いがけず引き込まれてしまうことがあります。
みっつめは、相手の男が、まさにその隙を突いてくる存在だった、ということです。
今回の相手は、各地に複数の女性を持つ、いわば”慣れた”既婚男性でした。こういう相手は、相手の渇いている部分を見抜き、家庭では言われなくなった言葉を、惜しみなくかけてきます。「最後にしたい」と願っていた人ほど、幸せへの期待が大きかったぶん、日常に埋もれてしまった特別感を、外から差し出されたときに揺らぎやすい──そういう残酷さが、この種の関係にはあります。
ここまで読まれて、優しい方ほど、こう思われるかもしれません。「やっぱり、俺にも原因があったのかもしれない」と。
長くこの仕事をしていますと、誠実で優しい旦那様ほど、そうやってご自分を責められる場面に、何度も立ち会ってきました。妻の再出発を応援し、忙しさを思いやり、違和感に気づいても「考えすぎだ」と自分に言い聞かせてきた。そういう方だからこそ、最後まで相手を責めきれず、矛先を自分に向けてしまう。その優しさは、ご相談者様の美点であり、本来であれば、何より大切にされるべきものです。
ですが──今だけは、その優しさを、いったん脇に置いてください。
なぜなら、今回裏切られたのは、ご相談者様お一人ではないからです。もう一人、大きな被害者がいます。お子さんです。
子供は、何も選べません。親の関係が壊れていく不穏な空気を、いちばん敏感に感じ取りながら、自分ではどうすることもできない。今後の住む場所も、一緒に暮らす親も、これからの生活も──そのすべてが、これからの大人たちの判断にかかっています。だからこそ、お子さんの「これから」を守れるのは、今、踏ん張れる親だけなのです。
ここで「自分にも原因が」と矛先を鈍らせてしまえば、慰謝料の交渉も、親権の話し合いも、確実に不利に傾きます。それは結局、お子さんが本来受け取れたはずの環境や経済的な支えを、削ってしまうことにつながりかねません。優しさが、守りたい相手を守れなくしてしまう──これほど切ないことはありません。
だから、今だけは、心を鬼にしてください。ご自分を責めるのは、すべてが片付いて、お子さんの暮らしが守られたあとでも、いくらでもできます。けれど今、立ち向かうべき局面は、二度とやり直せません。「優しい夫」である前に、「子供を守りきる親」であってほしい。歯を食いしばってでも、正当な権利を最大限に勝ち取っていただきたい。それが、いちばんの被害者であるお子さんへの、何よりの責任の果たし方だと、私は思うのです。


心を決めたなら、次は具体的な戦い方です。不貞調査は、撮影して終わりではありません。その先で法的にどう使えるかまで見据えてこそ、価値があります。
不貞行為は「不法行為」です。 配偶者以外との肉体関係は、民法709条の不法行為にあたり、慰謝料を請求できます。重要なのは、請求の相手が奥様だけでなく、不倫相手の男性にも及ぶという点です(共同不法行為/民法719条)。相手が「自分も既婚者だから」という事情は、責任を免れる理由にはなりません。
ただし「二重取り」はできません。 同じ精神的損害について、奥様と相手男性の双方から満額を重ねて取ることはできません。一方が支払った後、その人がもう一方に負担を求める(求償)ことは可能です。つまり「誰に、いくら、どう請求するか」には戦略がいるわけですね。
だからこそ、ものを言うのは「証拠の質」です。 LINEのスクリーンショット一枚では、肉体関係まで立証するには弱い。「複数回、二人でホテルに出入りしている」事実を、日時・場所がわかる形で映像に残す──この積み重ねが、相手に言い逃れを許さず、交渉を一気に有利にします。今回、連日の密会を押さえられたことは、ご相談者様にとって大きな武器になりました。
そして、親権というもうひとつの戦い。 ここで正直にお伝えしておきたいのは、「不貞をした側だから親権を取れない」とは限らないということです。日本の家庭裁判所は、親の落ち度よりも「子の利益」「これまで主に誰が育ててきたか(監護の継続性)」を重視します。母親が不倫をしていても、母親が親権者となるケースは現実に少なくありません。だからこそ、感情論ではなく、これまでの監護実態や今後の養育環境を、淡々と、しかし徹底的に整理して臨む必要があるのです。
報告の席で、ご相談者様は少し落ち着いた表情でこう話されました。
「妻は問い詰めず、ずっと我慢してきました。これから弁護士に相談して、きちんと向き合います。下の子たちは、私が引き取ります。顔が私そっくりなので、そこだけは安心しているんです」
きっぱりと言い切られたその表情には、すでに覚悟がにじんでいました。私たちは、その思いを汲み、ご相談者様の状況に合った弁護士をご紹介しました。現在、親権と正当な経済的清算を求めて、係争は続いています。
探偵の仕事は、真実を突き止めるところまで、と思われがちです。けれど本当に大切なのは、突き止めた事実を、依頼者様の「これから」にどうつなげるか。私たちは日々お話を伺いながら、背中からそっとお支えしています。
もし今、同じような違和感を抱えて、一人で抱え込んでおられる方がいらっしゃれば──まずは状況を整理するところから、ご一緒させてください。
できます。配偶者以外との肉体関係(不貞行為)は民法709条の不法行為にあたり、妻と不倫相手の双方に慰謝料を請求できます(共同不法行為/民法719条)。相手の男性が既婚者であっても、責任を免れる理由にはなりません。ただし同じ精神的損害について両者から二重に満額を受け取ることはできず、「誰にいくら請求するか」には戦略が必要です。
取れる可能性は十分にあります。日本の家庭裁判所は親の不貞といった「落ち度」よりも、「子の利益」と「これまで主に誰が監護してきたか(監護の継続性)」を重視するためです。父親が親権を望む場合は、感情論ではなく、これまでの育児実態や今後の養育環境を客観的な記録として整理し、準備することが重要になります。
肉体関係の立証には不十分なことが多いです。LINEは関係を「推認させる」材料にはなりますが、決定的な証拠にはなりにくいのが実情です。慰謝料請求や交渉で有力なのは、「二人が複数回ホテルに出入りした事実」を日時・場所がわかる形で記録した写真・映像です。探偵による行動調査は、まさにこの客観的証拠の確保を目的とします。
証拠を自分で集めようと動く前に、状況を整理することが先決です。問い詰めたりスマホを覗いたりすると相手が警戒し、証拠隠滅や逆に主導権を握られる恐れがあります。違和感の段階で探偵事務所に相談し、客観的証拠の確保と今後の方針(慰謝料・親権・離婚)を見据えて動くほうが、結果的に有利に進められます。
その必要はありません。不貞に至る人の多くは、家庭やパートナーへの明確な不満が原因ではないことが、実務上少なくありません。自分を責めても出口は見つかりにくく、その間に交渉や親権の準備が不利に傾けば、最も大きな被害者である子どもを守れなくなります。まずは事実を受け止め、ご自身とお子さんの「これから」を守ることに集中してください。