NEW!信じた頃に、お金の話は始まる|マッチングアプリ詐欺

こんにちは。「帝国法務調査室」の大塚律子です。

本日のテーマは、「あの人は本物だと思っていた」——交際相手に騙されていたと気づくまで、です。

■ご相談者 Sさん(女性・34歳・看護師)

「つきあっていた彼と、連絡が途絶えてしまって……探してください!」

そう言って、Sさんは事務所のドアを開けられました。

マッチングアプリで出会った男性に、1年9ヶ月で約190万円を渡してしまった。その間ずっと、彼は結婚を匂わせ続けていた——。

彼の正確な氏名と住所を確認したい。そういうご相談でした。

最初に、ひとつだけ申し上げておきたいことがあります。
アプリを使っている人が、みんなこんな人ばかりではありません。真面目にパートナーを探している方は、たくさんいらっしゃいます。今は国もマッチングアプリを活用した結婚を後押しし、少子化対策の一つに位置づけている時代です。出会いの入り口として、アプリそのものは決して特別なものではなくなりました。
それでも——その中に、ごくまれに、こういう恐ろしい人が・・・知り会った相手をどうにかしてやろうかと紛れていることも事実なのです。

信じた頃に、お金の話は始まる|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

だからこそ、気をつけてほしい。「こんな手口が、実際にあり、待ち構えている」ということだけは、どうしても書いておきたいと思いました。

目次

出会いはマッチングアプリ

出会いはマッチングアプリ|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

夜勤続きで疲れていた頃、同僚に勧められて、軽い気持ちでアプリを入れたんです、とSさんは話し始めました。

一週間後にマッチングした相手は「K」さん。プロフィールには「建設会社の現場監督/市内勤務」とあり、ヘルメット姿で自然に笑う写真が並んでいた。

「作り込んだ感じがなくて、普通の人だと思ったんです」

彼からの最初のメッセージは、こうでした。

「はじめまして。プロフィールを見たら、うちの現場の最寄り駅と同じで、なんだか親近感がわいてしまって」 「看護師さんって、大変なお仕事ですよね」

ありきたりだけど、嫌みがない。Sさんはそう感じたそうです。

「大変ですよー」とそっけなく一言だけ返したSさんに、彼は「夜勤とかあるんですか? しんどくないですか?」と返してきた。気遣いのできる人だな、と思った。それが、最初の一歩でした。

彼は毎日、朝の「おはよう」と夜の「おやすみ」を欠かさず送ってきました。夜勤ですぐに返せないこともあったけれど、彼は急かさなかった。

「仕事でよく無理をしている人の気持ち、なんかわかる気がして」 「無理しなくていい。俺が連絡したいだけだから」

押しつけがましくない。その距離感が、心地よかったそうです。

二週間ほどで「LINEを教えてもらえますか。もっとちゃんと話したくて」と言われ、断る理由もなくて、つなげました。LINEに移ってからも、彼の態度は変わらなかった。夜勤明けに「お疲れ様です」と届く。ただ、それだけ。でも、それがよかった。

「一緒にいれたら幸せだろうな」

一ヶ月が経った頃、彼がさらりと言いました。

「一緒にいれたら幸せだろうな」|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

「俺、そろそろちゃんと腰を落ち着けたいと思ってて。Sさんみたいな人と、ずっと一緒にいれたら幸せだろうな」「いつか家庭なんて持てたらって思う事もあるんだよね。(笑)」

34歳という年齢もあって、その言葉が刺さらなかったと言ったら、嘘になります——Sさんは、そう振り返りました。

二ヶ月が過ぎる頃には、話はもっと具体的になっていきました。

「庭がある一軒家がいいな」 「子どもの名前、考えたことある? 俺、女の子なら〇〇がいいなって、ずっと思ってて」 「指輪、Sさんの好みを聞いてもいい?」

子どもの名前まで。ここまで話してくれる人が、本気じゃないはずがない。そう思ったそうです。

会うようになって、信頼が育っていった

ほどなくして、二人は実際に会うようになりました。

ここが、後から思えば、Sさんが彼を疑えなくなっていった一番の理由かもしれません。会ってからの彼は、メッセージで感じていた印象そのままに、とても真面目だったのです。

時折、Sさんの家にもやってくるようになりました。夜勤明けのSさんを気遣い、そのまま泊まって帰っていくこともしばしばだった、と言います。約束をすっぽかすようなこともなく、誠実で落ち着いた人柄は、アプリで知り合った当時から少しも変わらなかった。

「画面の中だけの人じゃなかったんです。ちゃんと会えて、隣にいてくれて……だから、信じない理由がなかった」

徐々に気持ちも打ち解け、Sさんは彼を深く信頼するようになっていきました。

——そして、その信頼が十分に育ちきった頃に。あの話が、始まったのです。

信じた頃を見計らって、出てきた「お金を貸して」

その頃から、彼との連絡は少しずつ間遠になっていきました。

「母の付き添いがあって」と、電話に出られない日が増え、LINEの返事も、未読のまま何時間も返ってこないことが多くなっていったのです。

普通なら、不安になってもおかしくありません。けれどSさんは、むしろ逆に受け取りました。会えない日が、二人の絆を強くしている——そう思ったのです。

病に倒れた母親に、献身的に尽くす彼。その姿に、Sさんは「騙された」どころか、好きの気持ちをいっそう募らせ、信頼をさらに深めていきました。

信じた頃を見計らって、出てきた「お金を貸して」|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

そして、付き合って四ヶ月が過ぎた、ある夜中のことでした。

「母が救急で病院に運ばれた。手術代が必要で……30万円だけ立て替えてもらえないか。明日には返すから」 「会社の人間には頼みにくいし、今はSさんしか頼れる人がいない。本当に、迷惑かけてごめん」

看護師として、深夜の急変は知っている。だから「嘘っぽい」とは感じなかった。それに、いつも誠実だった彼が、ここまで言うのだから——将来一緒になる人が困っているときに助けるのは、当然だと思ったんです。

翌日、お金は、返ってきました。

ところが、その十日後。「また母のことで」と、今度は50万円の立て替えを相談されたのです。一度ちゃんと返してもらえたという安心感もあって、Sさんは彼を信じ、再びお金を貸してしまいました。

——ここに、典型的な手口が隠れています。

最初に借りたお金を、きちんと返す。そうやって信用を積ませておいてから、金額を少しずつ吊り上げていく。そして最後に、どかんと大きな額を持っていく。一度返してもらえた“実績”があるからこそ、相手は次も、その次も信じてしまう。最初の返済は、いわば信用を買うための撒き餌なのです。

——その後に届いたのは、「少し待ってほしい、事情があって」という一文だけ。

そして、要求は続きました。療養費、会社の立て替え、施設の初期費用——理由は毎回変わる。けれど、お金の話のあとには、必ずこの言葉がセットでついてきた。

「こんなこと、Sさんにしか頼めない。早く落ち着いたら、ちゃんとプロポーズしたい」

お金の要求と、結婚の話。その繰り返し。それでもSさんは、「こんな状況でも、将来のことを考えてくれている」と受け取ってしまった。

「誰にも、言わないで」

辛さに耐えきれず、友人に打ち明けたことを彼に伝えると、こう返ってきました。

「もう誰にも言わないで。誰かに言ったら、俺たちの関係がこじれる」 「家族とか友達に、余計な心配をかけたくないから」

Sさんは、口をつぐみました。

「誰にも、言わないで」|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

そして「次に会ったとき、ちゃんと話をしよう」——その言葉を最後に、彼はぱったりと家に来なくなりました。送ったメッセージに、既読がつくことは、二度とありませんでした。

最初は、心配していました。事故にでも遭ったのではないか、何かあったのではないか、と。

けれど、いくら待っても既読のつかない画面を見つめるうち、Sさんは、ふと我に返ったそうです。

——私は、この人のことを、本当は何も知らない。

勤め先も、家族のことも、彼が話してくれた言葉でしか知らない。恋と結婚の話に夢中になって、その確かめようのなさに、ずっと目をつぶってきた。「返す」と言いながら、返さなかった。いいえ、返せなくなったのではなく、最初から返すつもりなどなかったのだ——。

そう悟ったとき、結婚話に盲目になっていたSさんは、ようやく目が覚めた、と言います。

1年9ヶ月。190万円。

「その間、私はずっと“本物の関係だ”と信じていたんです。会えていたし、隣にいてくれた。お金だけじゃない。その時間も、気持ちも、全部持っていかれた感覚があって」

苦しい胸の内を、Sさんはそう話してくださいました。

お金が、別れられない理由にすり替わる

お金が、別れられない理由にすり替わる|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

こうしたご相談を伺っていて、いつも思うことがあります。お金を求める理由は、毎回もっともらしく、そして毎回、少しずつ違うのです。

「家賃が払えないと追い出される」 「親が病気で、まとまったお金が要る」 「仕事の道具を買えば、収入が上がる」

困っている人を助けたいという素直な気持ちと、「ここで断ったら、嫌われるのではないか」という不安。その両方に挟まれて、人はつい、お金を出してしまいます。

問題は、相手の側が最初から返す気などない——あるいは、返さないことで相手を縛れると分かって借りている、というケースが珍しくないことです。借金は、相手を逃さないための、見えない鎖になります。

そして、ひとたびお金が動くと、心の中で奇妙な変換が起こります。

「貸したお金を、返してもらわなければならない」 →「だから、彼と関係を切るわけにはいかない」 →「いつも、彼のことを考えている」 →「これは、恋愛感情だ」

本当は、お金を回収するために頭から離れないだけなのに。それを愛情だと勘違いしたまま、関係はズルズルと続いていく。Sさんの1年9ヶ月も、まさにこの渦の中にありました。

調査の結果、わかったこと

Sさんのために、彼についての調査を開始しました。

まず、彼が名乗っていた氏名。これは、嘘ではありませんでした。住民票上の住所も実在し、そこは彼の実家でした。

ところが——その実家を訪ねても、彼がそこで暮らしている気配はありませんでした。

応対に出た女性は、どこか慣れた様子で、こう漏らしました。「息子は、もうずっと帰っていません」。その一言で、彼女が彼の母親だと分かりました。福岡市内のどこかにはいるらしいが、詳しい住所は知らない、と言います。

——ここで、調査員の中に、ひとつの大きな引っかかりが生まれました。

彼がSさんに繰り返し語っていたのは、「母が病に倒れた」「手術が必要だ」「療養費が要る」という話でした。あれほどの大病で入院しているはずの母親が、今、目の前で、何事もなかったように玄関に立っている。

母親の病気は、最初から、存在しなかったのです。

けれど、調査員はそこで、もうひとつの違和感に気づきました。玄関先に置かれたカゴに、彼宛ての郵便物が、まとめて溜め置かれていたのです。

——溜めているということは、いずれ取りに来るということ。近いうちに、ここへ姿を見せるのではないか。

その勘を頼りにしばらく様子をうかがっていると——彼は現れました。

実家から出てきた彼は、しきりに周囲を気にしながら移動し、やがて福岡市内のとあるマンションへと帰っていきました。建物に入る際も、何度も後ろを振り返り、辺りを見回している。何かに追われている人間の、警戒の仕方でした。

調査の結果、わかったこと|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

そして、その部屋に、女性が同居している様子はありませんでした。彼は、結婚もしていませんでした。けれど、Sさんが信じていた「彼の暮らし」も、また、どこにもなかったのです。

判明した事実を、Sさんにお伝えしました。

母の病気は、嘘だった。手術も、療養費も、施設の費用も、すべて。Sさんは、明らかに違っていた現実に怒りをにじませながら——それでも、どこか落胆したように、肩を落とされました。

その様子を見て、調査員は、あることを感じ取りました。

Sさんは、頭ではもう、わかっている。彼が嘘をついていたこと、お金は戻らないかもしれないこと。それでも、心のどこかで、まだ彼への気持ちを引きずっている。ふっきれない。重い記憶が、前に進もうとする足を、後ろから引いている——。

これは、被害に遭いながら、同時に“洗脳されているような状態”です。長い時間をかけて、巧妙に信じ込まされてきた人ほど、こうなります。

だからこそ、調査員はその点を、はっきりとお伝えしました。

「あなたは悪くない。でも、その気持ちこそが、相手の思うつぼなんです」と。引きずったままでは、戦えない。まずはその鎖を断ち切って——一緒に、戦う準備をしましょう、と。

Sさんは、しかるべき手続きを進めることを決められました。

ただ、ここで一つ、現実の壁にぶつかりました。

実は、最初の30万円が一度きちんと返済されていたことが、かえって足かせになったのです。「一度は返している」という事実があると、「最初からだますつもりだった」と立証するのが難しくなり、詐欺としての立件のハードルが上がってしまう。

そこでまずは弁護士を通じ、貸したお金の返還請求を行いました。あわせて、被害届という形でも警察に相談しましたが——案の定、というべきでしょうか。一度返金があったことが理由で、被害届は受理されませんでした。

それでも、ここで終わりではありません。

調査で判明した彼の住居をもとに、返還請求の手続きは現在も進めています。そして、のちにわかったことですが、彼が手をかけていたのは、Sさんだけではありませんでした。同じ手口で被害に遭っている女性が、複数いたのです。

同じ被害を受けた人たちと声を合わせれば、一人では届かなかったことにも、手が届くかもしれない。Sさんは今、その動きにも目を向けながら、前を向こうとしておられます。

Sさんの言葉

Sさんの言葉|マッチングアプリ詐欺-探偵事件簿-福岡

「今ならわかります。でもあのとき私には、“この人を信じたい”という気持ちしかなかったんです」

人の命に関わる仕事をしているのに、自分のことになると、何も見えなかった。「医療の話が通じる」「現実的な理由がある」「ちゃんと会えて、誠実だった」——そういう“らしさ”が、全部、信頼の材料になってしまっていた。

「お金が戻ってくるかどうか、正直、わかりません。それでも、黙っていたくなかったんです」

Sさんは、そう言って顔を上げられました。自分と同じ手口で苦しんだ人がいる。その人たちと声を合わせれば、何かが変わるかもしれない。だから、恥を忍んででも、話すことを選んだ——と。

はっきり言えることがあります。これは、今でもよくある手口です。 海外の見知らぬ相手から、ではない。実際に会って、家にも来て、誠実に見えた——そんな“ごく普通の人”から騙されることが、実際にあるのです。

賢いかどうかは、関係ありません。

  • 身内の緊急事態を理由に、お金を求めてくる相手。
  • 最初は少額を借りて、きちんと返し、徐々に金額を吊り上げてくる相手。
  • お金の話と、結婚や将来の話が、いつもセットで来る相手。
  • 「誰にも言わないで」は、詐欺師の常套句です。
  • 人を孤立させ、冷静に考える機会を奪っていく。

一つでも当てはまったら、どうか立ち止まってください。

今回、Sさんは「恥ずかしいけれど、ぜひブログにしてください」とおっしゃいました。

特に伝えたいのは、この二つだそうです。

どんなに信頼している相手でも、お金の貸し借りには、はっきり線を引くこと。 そして、「誰かに相談すること」を止めようとする人を、信じないこと。

「同じことが、もう誰にも起きてほしくないから」——それが、Sさんの切なる願いでした。

騙した側が、悪い。それだけは、はっきり言えます。

交際相手のことでお悩みや、気がかりなことがありましたら、いつでもご相談ください。あなたのお力になれればと思っています。

交際相手のお金トラブル・ロマンス詐欺に関するよくあるご質問

実際に会って交際していた相手でも、詐欺になりますか?

なり得ます。「実際に会っていたか」「交際していたか」は詐欺の成立要件ではなく、嘘の理由でお金をだまし取られたかどうかが問われるためです。自宅に来るような交際関係であっても、「親の手術代」などの説明が虚偽で、相手に最初から返す意思がなかった場合、詐欺罪(刑法246条)に該当し得ます。ただし「だます意図が最初からあった」ことの立証は容易ではありません。LINEのやり取り・振込履歴・相手の話していた勤務先や住所などを保存したうえで、警察や弁護士、調査機関にご相談ください。

一度はきちんと返してきました。それでも詐欺で被害届は出せますか?

被害届の提出自体はできますが、受理されないことがあります。一度でも返済された事実があると、「最初からだますつもりだった」という詐欺の故意の立証が難しくなり、警察が事件として扱いにくくなるためです。実際に、初回分を返済して信用させてから金額を吊り上げる手口では、この壁にぶつかるケースが少なくありません。その場合でも、貸したお金の返還請求という民事の道は残されています。あきらめる前に、弁護士や調査機関にご相談ください。

詐欺として立件できなくても、貸したお金は取り戻せますか?

可能性は残ります。刑事事件として立件できなくても、貸金の返還請求や不当利得・損害賠償の請求といった民事手続きで取り戻せる場合があるためです。ただし、これには相手の本当の氏名や住所を特定できていることが前提になります。相手が偽名や嘘の住所を使っていた場合は、まず素性の調査が出発点です。やり取りの記録を保管し、相手につながる手がかり(勤務先・最寄り駅・写真・電話番号など)を整理したうえでご相談ください。

相手の名前や住所が嘘だったかもしれません。本人を特定できますか?

特定できる可能性があります。交際していた相手であれば、メッセージや会話、写真の背景、待ち合わせ場所、電話番号やアプリのIDなど、本人につながる手がかりが数多く残っているためです。これらをもとに調査を進めることで、虚偽だった氏名や住所の実態が判明することがあります。返還請求や法的手続きは、相手の正確な身元が分かって初めて動き出すものです。記録は消さず、できるだけそのまま保管しておいてください。

「家族や友人には言わないで」と口止めされています。これは危険なサインですか?

危険なサインです。口止めは、被害者を周囲から孤立させ、冷静に考える機会を奪うための典型的な手口だからです。「誰かに言ったら関係がこじれる」「心配をかけたくない」といった言葉で相談を止めようとするのは、第三者の目が入ると嘘が露見すると相手が分かっているためです。少しでも違和感があれば、まず信頼できる家族・友人、あるいは専門の相談窓口に話してください。一人で抱え込まないことが、抜け出す第一歩になります。

our youtube

24時間年中無休

ご相談お見積り無料

福岡を拠点に九州全域で調査を承っております。
どんな些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

メールでのお問い合わせ

LINEでのお問い合わせ

目次